オレゴン州はアメリカ西海岸にあり、カリフォルニア州とさらに北のワシントン州と挟まれたところにあり、日本の面積の7割ほどの広さがあります。主要産業が農林水産業からもわかるとおり豊かな自然に恵まれておりブドウの栽培に適した土地が広がったエリアです。
オレゴン州のワイン生産地域は大きく3つのエリアに分類できます。
ウィラメット・バレー
ウィラメット・リバー沿いに北はポートランドから南はユージンまでの南北約250km、東西は広いところで100kmと細長い地域。
オレゴン州の大部分のワインリーは海沿いにあるコーストレンジ山脈からカスケード山脈に挟まれた南北に広がるウィラメット・リバー沿いの丘陵地帯に存在しています。このエリアはコーストレンジ山脈からカスケード山脈をはさんだ南北に広がるエリア。春から秋にかけては雨も少なく温暖で、冬は雨も多いが氷点下になることはほとんどない海洋性気候です。
北緯45度前後に位置するこのあたりはブルゴーニュと同じ緯度帯にあり、夏場の柔らかい日照が長く温和な気候と合わさり繊細なワインを作り上げます。主要品種はピノ・ノワール、ピノ・グリ、シャルドネなど。
オレゴン南部
ユージンの南からオレゴン州の南のカリフォルニアとの州境まで地域。オレゴン州では一番古く1800年代の半ばにブドウ栽培がおこなわれたところです。
北寄りのローグ・バレーとカリフォルニア州境に面したアムクワ・ヴァレーではブドウの生育条件が異なり、北側はウィラメット・バレーと同じようにコーストレンジ山脈からカスケード山脈に挟まれた比較的温暖な地域で主要品種はピノ・ノワール、ピノ・グリ、リースリングなど。一方、南側はオレゴン州の中でも最も温暖で乾燥した地域で主要品種はシラー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニオンなど。
コロンビア・ヴァレーおよびオレゴン州東部
コロンビア・ゴージュにある観光地フットリバーからコロンビア・リバーを遡りワシントン州のワラワラまで伸びる細長い地域とオレゴン東部のスネーク・リバー沿いの地域。
コロンビア・リバー沿いのエリアはフットリバー近郊に10数軒ワイナリーがあり、この地域ではピノ・ノワールやシラーなどが作られています。
コロンビア・リバーの流れが90度以上曲がってコロンビア渓谷を作る手前にあるワラ・ワラの地域はオレゴン州境から4,5キロワシントン州に入った小さな田舎町ワラ・ワラを中心にしたエリアに数多くのワイナリーがあり、評価の高いワインが作られています。この地域は内陸型の気候で乾燥して昼夜の寒暖差が激しいところで、カベルネ・ソ-ヴィニオン、シラー、メルローなどが栽培されています。
オレゴン東部のスネーク・リバー・ヴァレーはアイダホ州に面した地域でワイナリーのほとんどはアイダホ州側にあります。
オレゴン州では1800年代の半ばからブドウ栽培が行われていました。オレゴン・ワインが本格的に作られるようになったのは、1965年代にウィラメット・バレーの北部にピノ・ノワールを植えた事によってはじまりました。
1960年代後半から1970年代に掛けて、アデルスハイム、ポンジー、ソコール・ブロッサー、エルク・コーブ、アミティ、イラースなど現在でもオレゴン・ワインを代表するワイナリーが次々にワイナリーを開設しました。
1979年にフランスのグルメガイド「ゴー・ミヨ」が主催したパリで行われたワイン対決でジ・アイリーヴィンヤードのピノ・ノワールSouth Block Reserve1975ビンテージがピノ・ノワールのトップ10に入り、世界にオレゴンがワイン生産地としてその名を知られるようになりました。
1980年代に入り、オレゴン・ワインの評価が徐々に高まり、1985年にワイン評論家のロバート・パーカーが”オレゴンワイン:アメリカの新しいワイン・スター”タイトルの記事でオレゴンワインを高く評価しました。
フランスのネゴシアン ロバート・ドルーアンがオレゴンの気候と土壌に着目しウィラメット・バレーのダンディに、現在オレゴンを代表するワイナリーの1つになったドメーヌ・ドルーアンを1987年に設立しました。今ではオレゴンを代表するワイナリーの1つになっています。
1980年代から1990年代に掛けて、よりオレゴンの気候や土壌に合ったクローン(品種の中のさらに特徴を持つ1つの種別)の栽培が試されるようになりました。
1990年にブドウの生育に害を及ぼすフィロキセラ(アブラムシの一種)が襲いますが、フィロキセラ耐性のある台木をいち早く使うことにより被害の拡大を抑えました。ブドウの植え替えに合わせてピノ・ノワールやシャルドネのクローンの選別が進み、結果としてさらにオレゴン・ワインの品質が高まることになりました。
現在、460以上のワイナリーがオレゴン州にあります。家族経営の小規模なワイナリーが多く、ワイナリーの平均生産量は5000ケース(1ケース12本)を下回っています。
2000年から2010年までの間にワイナリーの数は約3倍に増えたにもかかわらずブドウの作付面積は約2倍にしか増えていないことを見ると小規模ワイナリーの参入がいかに多いかを示しています。小規模だからできるブドウの収量を制限し手間をかけることによって高品質のワインが作られていることがオレゴン・ワインの評価が高まってきている一つの要因ではないでしょうか。
また、新しいワイナリーできる理由の1つとして、醸造施設を持たなくてもワインを作ることができる環境もあるようです。いくつかのワイナリーが共同で醸造施設を開設したり、カスタム・クラッシュ・ファシリティという顧客のブドウを注文に合わせてプレス、醸造、ボトリングなどを行うワイン製造の委託施設や、すでに醸造施設を持ち実績のあるワイナリーの施設を利用したりすることで、より小規模なワイナリーでも初期投資を抑えてワインを作ることができます。
オレゴンワインを代表する品種はピノ・ノワールです。オレゴン全域でのピノ・ノワールの栽培面積は60%近くを占め、2番目は白ワイン用品種のピノ・グリで約13%の面積で生産されています。ワイン生産量でもピノ・ノワールは50%、ピノ・グリは20%を占めています。 3番目となるシャルドネは、1990年代半ばからにディジョン・クローンを栽培するようになり品質が上がったものの、生産量としては下がって現在は全体の4%ほどしかありません。 このように上位2品種(ピノ・ノワール、ピノ・グリ)だけで全体の4分の3が作られていることは驚くべきことです。
アルコール度数はカリフォルニアなどに比べると13%台の比較的低めに作られるものが多く、冷涼地独特の力強さよりも上品で繊細は味わいを持つワインが作られています。
ブドウ品種のクローンを選別してワインが進化したことから現在でもクローンをブドウ品種のクローンまで詳細に告知しているワイナリーが多いこともオレゴン・ワインの特徴です。
オレゴンワインを紹介するときによく取り上げられているのが、サステナブル、オーガニック、あるいはバイオダイナミックなどの環境への配慮と食の安全です。これらのことを証明するために様々な認証・認定制度があり、多くのワイナリーが認証を受けています。
ブドウ農園やワイナリーでよく取得されている認証制度を掲載したので興味のある方はご覧ください。
-> 農法や環境の認証制度